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台湾のTさんを思う

暑い・・・。
身体にこたえる暑さですね。
暑気あたりなのか?夏バテなのか?
今年はなんだか暑さがきつく感じる。なんでだ。
思うように動けないのがとてもイヤなので
生活を見直す日々。



台湾の高雄で、ひどい爆発事故があったようで
ニュースで街の様子を見てとても胸が傷んだ。
とても思い出深い場所だったから。


学生の頃、同じクラスに台湾からの留学生のTさんがいた。
ほっそりした菊池桃子みたいな顔立ちの美人で
とても親しみやすくてキュートな人だった。

私たちの学科は皆でやる作業が多かったし
興味の対象が似ている者同士ということもあって
割とすぐに仲良くなっていった。
そのうち、中国語の授業が一緒だった友人5人とTさんと私の皆で話しているうちに
「Tさんの家に遊びに行きたい!行こう!」ということになり
1年の春休みに台湾旅行を計画したのだった。

バイトを増やしお金を貯めて
6人それぞれ違う出版社のガイドブックを買い
地図をさんざん眺めてルートを練り、JTBでチケットを予約して
6人みな初の海外旅行を決行した。

空港のある台北からTさんの住む高雄市までを
観光しながら縦断する形になったのだけど
行く先々で親切な人にあってとても楽しかった。

高雄に着くと、TさんとTさんのお母さんが出迎えてくれて
Tさんの弟さんも交えて、大変立派なレストランで食事を御馳走になった。
私達はそのおもてなしにかなり驚きながらも
野菜や魚介類の美味しいお料理をいただき
お母さんと、徴兵を終えたばかりだという弟さんといろんな話をした。

私達の拙い中国語ではお母さんにはほとんど話が通じず
(しかも中国語と台湾語は厳密に言うと違う、というのをこの時ようやく知った)
Tさんが逐一通訳をしてくれた。
弟さんとは、通じないけどいくらか英語のほうがマシ、という感じだったので
中国語(台湾語)と英語と日本語を交えながら身振り手振りでしゃべり、笑いあった。
3つの言語が飛び交いすぎて混乱したのか
しまいにはTさんと弟さん2人の会話までもが、なぜか英語になっていて
2人ともそれに気づかず一生懸命英語で伝えあおうとしている様子がおかしかった。

あ、今考えれば、あまりの中国語の出来なさに
Tさんが気を配ってくれたのかもしれない‥私達にも話がわかるようにって。

Tさんのご家族の誠実さというか、あたたかみが伝わってくるようだった。

そして夜はTさんの案内で高雄駅近くの飲茶に行った。
スマートにあれこれとおすすめの珍しいものを注文してくれるTさんは
ほれぼれするくらいかっこよかった。
夜の屋台を見て歩くのも
Tさんがいたから安心してみなのびのびと楽しめた。

でも、私達は若気の至りというか
まるで一人暮らしの友人のアパートを訪ねる程度の気軽さで
「Tさんの家に行きたい」だなんて言って
台湾まで来てしまって
こんなに手厚くおもてなしをされるなんて思ってもみなかったから
ちょっと恐縮していた。

それをTさんに伝えると
Tさんはああそう、とうなずいた後
「台湾では、お友達が遊びに来たらご馳走するのが当たり前、
という文化があります。そういう国なんです」
とさらっと言った。

私はその言い方を聞いて少しはっとして
「ああ、Tさんって大人なんだな」と思った。

日本だってまあそういう国といえばそうだから
今考えればたぶん私も同じようにおもてなしするかもしれないけど
20歳そこそこで、友人にそんなふうにさらっと言えるかな、と思ったのだ。

普段は、
どちらかというと私がTさんの手助けをすることのほうが多かった。
日本に来てまだ1、2年のTさんは、とても日本語が堪能だったけど
たまに難解なものもあったからだ。
でも
こちらが教えたり手助けすることが多いのは
ただ「日本語ができるかできないか」という点においてだけなのだ、
という当たり前のことを
台湾でTさんに会うまでうっかり忘れていたのだ。

異国に来て外国語を学んで大学に入り、
母国で家族と一緒に、友人に自分の持っているものを差し出してくれて
「台湾では当たり前だから」とさらっと言うTさんは、私よりずうっと大人に見えた。
教室で過ごしているだけでは、そういうことが見えなくなっていた。

そういう自分を幼く感じた。


Tさんのおかげで楽しい旅を終えたあと
お母さんと弟さんにお礼の手紙ととらやの羊羹を送った。

手紙は、皆で集まって辞書や教科書の例文を駆使して書いたけど
あのレストランでの様子を思い出すと
内容が伝わったのかどうかは限りなくあやしい。
とらやの羊羹も、一体なんでそれを選んだのか
果たしてちゃんと食べられる状態で到着したのか
台湾の人のお口に羊羹が合ったのかどうかも分からない。
でもとにかく、本当に楽しい旅ができたので
精一杯のお礼の気持ちを伝えたかったのだということは覚えている。


そんな思い出のある高雄なのに
ニュースで爆発現場の地図を見ても
悲しいけど、Tさんの家がどのあたりだったか、さっぱり思い出せない。
住所も地名も、高雄駅からどのくらいの距離にあったのかも忘れてしまっている。
卒業してから、一度だけ手紙のやりとりをしたけど
今は連絡先もわからない。

ああ、でもそうだ、高雄にあったのはTさんのご実家なのだから
Tさんや弟さんがまだそこにいるとは限らないんだった。
でも、お母さんは、どうなんだろうか。

爆発はそんなに広範囲ではないみたいだから
少しでも現場と家がずれていてくれたらいいなと思う。
みんな怪我もなく、家も無事だといい。
街がああなってショックは受けただろうけども。

Tさんも、元気にしてくれていると
いいなと思う。






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